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東京高等裁判所 平成11年(ネ)4759号 判決 2000年3月22日

控訴人兼附帯被控訴人(以下「控訴人」という。) A野太郎

<他1名>

右両名訴訟代理人弁護士 大野裕

被控訴人兼附帯控訴人(以下「被控訴人」という。) B山松夫

<他1名>

右両名訴訟代理人弁護士 釘島伸博

主文

一  本件各控訴に基づき、原判決主文第一項及び第二項を次のとおり変更する。

1  被控訴人らは、連帯して、各控訴人に対して、それぞれ金二一四一万二六六〇円及び内金二一二九万〇四〇二円に対する平成八年一二月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

二  控訴人らのその余の各控訴をいずれも棄却する。

三  本件各附帯控訴をいずれも棄却する。

四  訴訟費用(附帯控訴の費用を含む。)は第一・二審を通じてこれを二分し、その一を控訴人らの負担とし、その一を被控訴人らの負担とする。

五  この判決の第一項1は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を次のとおり変更する。

2  被控訴人らは、連帯して、控訴人らに対し、それぞれ金三九七二万九七三六円及び内金三五八一万九一四七円に対する平成七年一〇月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一・二審を通じて被控訴人らの負担とする。

二  附帯控訴の趣旨

1  原判決を次のとおり変更する。

2  被控訴人らは、連帯して、控訴人らに対し、それぞれ金六八〇万一三一六円及びこれに対する平成八年一二月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  控訴人らのその余の請求を棄却する。

4  訴訟費用は、第一・二審を通じて控訴人らの負担とする。

第二事案の概要

一  事案の要旨

本件は、交差点の横断歩道付近で自家用普通乗用自動車に撥ねられ(以下「本件事故」という。)、本件事故から四日後に死亡した当時小学一年生であったA野三郎(以下「亡三郎」という。)の両親である控訴人らが右車両を運転していた被控訴人B山松夫(以下「被控訴人B山」という。)及び右車両の所有者被控訴人有限会社C川・エンタープライズに対して損害賠償を求めた事案である。なお、本件事故の発生について被控訴人B山に過失があったことは、当事者間に争いがない。

二  原判決の概要及び控訴理由

原判決は、本件事故の発生について亡三郎にも過失があり、その割合は一割五分であるとして過失相殺を行い、また、損害額については控訴人らの請求額から一部減額し、控訴人らの請求を一部認容した。

控訴人らは、控訴理由として、亡三郎には過失がなかったとして原判決が過失相殺をしたのは誤りだと主張するとともに、原判決が逸失利益の算定にあたり年率五パーセントの割合で中間利息の控除を行ったのは失当であるとして、年率四パーセントの割合で中間利息を控除すべきだと主張した。

被控訴人らは、附帯控訴の理由として、原判決が認容した損害のうち、慰謝料については減額すべきであり、墓地購入・墓石建立費用及び弁護士費用は控訴人らの損害として認めるべきではないと主張した。

三  当事者の主張及び争点

当事者の主張及び争点は、原判決「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用するが、控訴理由及び附帯控訴の理由を踏まえ、本件の争点についての当事者の主張を要約すると次のとおりである。

1  本件事故の態様及び過失相殺の可否

控訴人らは、亡三郎は本件交差点の東側の横断歩道(以下「本件横断歩道」という。)上を歩いて横断していたところ、被控訴人B山は前方注視を完全に怠ったまま高速度で進行したため、亡三郎の発見が遅れ、本件横断歩道上で亡三郎を撥ねたのであるから、亡三郎には過失はなかったと主張するのに対し、被控訴人らは、亡三郎は本件横断歩道から西に約一〇メートル離れたところに設置されている電柱付近の歩道上から左右の安全を確認することなく突然本件道路に飛び出してきたのであるから、同人にも過失があり、その過失割合は少なくとも一割五分であると主張する。

2  損害

(一) 逸失利益

控訴人らは、逸失利益を算定するための中間利息の控除率は、現在受け取った金額を就労終期までどれだけの利回りで運用することができるかという将来の経済事象に関するものであるのに対し、遅延損害金は、不法行為が発生した時点において支払われるべき賠償金を加害者が支払わなかったことに対するペナルティーであり、両者はその性質を全く異にするから、中間利息の控除を遅延損害金と同じ割合で行う論理的必然性はなく、現在のような超低金利水準は、既に成熟した日本経済の状態からして、将来にわたって相当期間継続することが極めて高い蓋然性をもって予測できるから、中間利息の控除率は年四パーセントとすべきであると主張した。

(二) 慰謝料

控訴人らは、本件事故の態様、亡三郎を失った控訴人らの悲しみの大きさ等に鑑みると、原判決の認容額は低額に過ぎると主張するのに対し、被控訴人らは死亡慰謝料として総額二〇〇〇万円が相当であると主張した。

(三) 墓地購入・墓石建立費用

被控訴人らは、墓地、墓石は亡三郎個人のためのものではなく、控訴人ら「A野家」において今後承継されることとなる祭祀財産であり、仮に、控訴人らが既に「A野家」の墓地、墓石を所有していたなら、新たに購入、建立する必要のなかったものであるから、墓地購入・墓石建立費用の負担と本件事故との間には相当因果関係はないと主張した。

(四) 弁護士費用

被控訴人らは、同人らは控訴人らに対し相当の損害金を支払う意思があったにもかかわらず、控訴人らは不当に高額な要求をして本件訴訟を提起したのであるから、本件訴訟のための弁護士費用については被控訴人らが賠償すべき義務はないと主張した。

第三当裁判所の判断

一  本件事故の態様及び過失相殺の可否

1  本件事故が発生するまで亡三郎と行動を共にし、本件事故を目撃したA野一郎の原審及び当審における証言を要約すると、次のとおりである。

A野一郎と亡三郎は、本件交差点において本件道路とその北側で直角に交わる道路(以下「本件通路」という。)の東側を北から南に向かって歩いて本件交差点の北側の歩道に達した。A野一郎と亡三郎は本件横断歩道を渡ってから南側の歩道を東に向かって進んで自宅に帰るつもりであった。A野一郎と亡三郎は本件道路を走行する自動車が途切れるまで本件横断歩道の北の歩道でA野一郎が東、亡三郎が西に並んで待っていた。本件横断歩道の西側の信号が赤になり、西から自動車が来なくなったので、東を見ると、東からも自動車は来ないようだったので、二人は本件横断歩道上を少し歩き始めた。A野一郎が一、二歩歩いたとき、東から高速度で自動車が近づいてくるのが見えたので、A野一郎は立ち止まってその自動車の方を見ていた。その車がだんだん近づいて来るのに、亡三郎がそのまま横断を続け、本件横断歩道上のセンターラインを越えた辺りを歩いていたので「危ない」と叫んだ。亡三郎は自動車に気付いて西に逃げようとして、一、二メートル走ったとき後ろから自動車にぶつけられた。

2  右A野一郎の証言及び関係各証拠に基づいて、本件事故の態様について判断する。

(一) 進路について

(1) A野一郎と亡三郎が本件通路の東側を北から南に歩いていたことは、同人らとすれ違ったという深沢澄代の陳述書でも裏付けられるところであり、A野一郎と亡三郎が自宅に向かって歩いていたことも、当時の時刻から考えて首肯できるところである。そして、亡三郎らの自宅が本件交差点の東の方にあり、本件道路の南側で本件道路に面していることから考えると、本件横断歩道を渡ろうとしたことは、進路の選択として合理的なものであったということができる。

(2) 実況見分調書には、被控訴人B山が亡三郎を最初に発見した地点として、本件通路より西側で本件道路のセンターラインより若干北の地点を指示し、そのときの被控訴人B山と亡三郎との距離は二〇・三メートルであると記載されており、また、衝突地点として、右地点の南で本件道路のセンターラインの若干南の地点を指示した旨の記載がある。また、被控訴人B山の司法警察員に対する供述調書及び検察官事務取扱副検事に対する供述調書によれば、同人は司法警察員及び検察官事務取扱副検事に対して亡三郎を最初に発見した地点及び衝突地点について同旨の供述をしていることが認められる。さらに、捜査記録の中の通話用紙には、A野一郎が警察官からの電話による問い合わせに対して本件通路の西側の電柱付近から横断を開始したと述べた旨が記載されている。

しかし、原審及び当審において被控訴人B山は、同人が最初に亡三郎に気付いた地点は分からないと述べ、最初に亡三郎を発見したときの同人との距離は約一〇メートルであったが、亡三郎がいた地点ははっきりしない旨を供述していること、右各地点は実況見分の際に被控訴人B山と本件事故の捜査を担当していた中嶋正とが確認したものであるから、被控訴人B山が自己に有利に指示した可能性があること、仮に亡三郎がそのような進路を取ったとすると、本件通路の東から自宅とは反対の方向である西に移動したことになり、しかも、そのまま本件道路を渡ったところには植込みがあって亡三郎が跨ぐのは困難であるところ、亡三郎がこのような進路を採る合理的な理由は見当たらないこと、実況見分調書によれば、被控訴人B山の指示に基づいて同人が最初に亡三郎を発見したときに被控訴人B山がいた地点と亡三郎がいた地点との間の距離を測定したところ二〇・三メートルであったこと、右通話用紙は中嶋正がA野一郎に対して二度確認した上で記載したことが認められるものの、本件横断歩道より東の歩道上にも電柱があるから、A野一郎はその電柱のことを頭に置いて話した可能性を否定できないこと、以上の事情に照らすと、前記実況見分調書等の記載を採用することはできない。

(3) したがって、A野一郎の証言どおり、亡三郎は本件横断歩道を渡っていたと認める。

(二) 亡三郎は歩いていたか、走っていたか

(1) 被控訴人B山の司法警察員に対する供述調書によれば、同人は司法警察員に対して亡三郎が飛び出してきたと供述していること、捜査記録の中の通話用紙には、A野一郎が警察官からの電話において、亡三郎が飛び出したと述べた旨が記載されている。

しかし、被控訴人B山の検察官事務取扱副検事に対する供述調書によれば、同人は検察官事務取扱副検事に対して亡三郎が走っていたか歩いていたか分からない旨供述していることが認められ、また、被控訴人B山は原審及び当審において、亡三郎が車の方に飛び込んできたかどうかよく分からないし、飛び出してきたかどうか分からず、飛び出しという表現は相応しくない。飛び出しでないことは認める等の供述をしていること、A野一郎が当審における証人尋問で明確に通話の内容を否定していることなどの事情に照らすと、前記供述調書等の記載を採用することはできない。

(2) また、亡三郎の診療録には路上に飛び出して時速五〇キロ位の走行の乗用車にひかれた旨の記載があるが、この診療録を記載した医師がいつ、誰からそのような情報を聞いたのか不明である(原判決は、救急隊員又は控訴人らから聞いたと認定している。しかし、原審証人中嶋正及び八町夏美の各証言によれば、救急隊員は被控訴人B山に被害者がどちらから来たか、車のどこにぶつかったのか等の質問をしたが、被控訴人B山は知らないとしか答えていないこと、中嶋正が救急車より遅れて本件事故現場に到着したとき、被控訴人B山は気が動転して震えているような状態であったことが認められるから、被控訴人B山が救急隊員に右のような情報を伝えたとは考えられないし、原審証人A野太郎の証言によれば、控訴人らがA野一郎から本件事故の詳しい状況を聞いたのは救急車が出発した後であることが認められるから、控訴人らが救急隊員に右のような情報を伝えることはできなかったというべきである。また、控訴人らが時速五〇キロ位で被控訴人車が走行していたとの内容の話をA野一郎から聞いたとの証拠もない。かえって、A野一郎は原審において被控訴人車は時速八〇キロメートル以上だったと供述しているのであるから、控訴人らがA野一郎から右のような内容の話は聞いていないと認めるべきである。したがって、救急隊員又は控訴人らが医師に右の情報を提供したと認めることはできない。)から、右記載は採用しない。

(3) したがって、この点についてもA野一郎の証言は信用でき、亡三郎は歩いていたと認める。

(三) 衝突直前の亡三郎の動き、衝突地点

(1) 被控訴人B山は、原審において、衝突する直前亡三郎は被控訴人B山から見て左向きでやや被控訴人B山の方を向いていたと供述する。

しかし、《証拠省略》によると、本件事故後、被控訴人車の前部ナンバープレートの中央左側の下半分が折れ曲がり、ボンネットの中央部左よりの部分が凹んでいたこと、亡三郎の足には多数の傷があったが、右足の膝の後ろからふくらはぎあたりの傷がもっとも大きかったことが認められるから、まず亡三郎の右足の膝の後ろからふくらはぎにかけての辺りに被控訴人車の前部ナンバープレートの左下部が衝突し、その後ボンネットに撥ね上げられたというべきである。また、《証拠省略》によれば、亡三郎の血痕は被控訴人車の進行方向に付着していたことが認められるから、亡三郎は被控訴人車の進行方向に動いていたと推認するのが相当である。

したがって、被控訴人B山の前記供述は採用できない。

(2) 実況見分調書によると、被控訴人車の右側車輪のスリップ痕が本件横断歩道を西に若干はずれた辺りから一二・八メートル、左側車輪のスリップ痕が本件横断歩道から西に八メートル以上離れた地点から四・三メートル残されていたことが認められるところ、《証拠省略》によれば、亡三郎に衝突したのは被控訴人車のブレーキが効き始めたころであったことが認められるから、衝突地点は本件横断歩道の西側ないし本件横断歩道から若干西に外れた辺りと認めるのが相当である。

なお、実況見分調書によると、本件道路はアスファルト舗装されており、本件事故当時本件道路は乾燥していたことが認められるところ、《証拠省略》によれば、乾燥したアスファルト舗装の道路においては、時速五〇キロメートルのときのスリップ痕の長さは一二メートル、空走距離は九・七メートル、時速五二キロメートルのときのスリップ痕の長さは一三メートル、空走距離は一〇・一メートルであることが認められる。そうだとすると、被控訴人B山が亡三郎を発見したときの速度は、おおよそ時速五〇キロメートル程度であり、被控訴人B山が最初に亡三郎を発見したときの被控訴人B山と亡三郎との距離はおおよそ一〇メートルであったことになり、被控訴人B山の前記供述とも符合することになるし、時速五〇キロメートル位で走行していたとの原審及び当審における被控訴人B山の供述とも符合する。

(3) 以上のとおりであるから、この点についてもA野一郎の証言は信用することができる。

(四) 以上検討したところから明らかなように、A野一郎の証言は、その内容から見て十分信用に値するものであるが、当審におけるA野一郎の証言態度からも同人の証言の信用性に疑いを差し挾む余地はない。

3  右のとおりであるから、本件事故は、亡三郎が本件横断歩道を歩いて北から南に本件道路を横断している途中に被控訴人車に気付き、西に向かって逃げようとしたが逃げ切れずに起こったものであり、衝突地点は本件横断歩道の西側ないし本件横断歩道の若干西にはずれた辺りで、本件道路の北端から約八・五メートル(前記の被控訴人車の衝突部位及び甲第八号証で認める。)であると認める。したがって、亡三郎には全く過失はないというべきであり、被控訴人B山がわずかな注意を払っていさえすれば本件事故は起こらなかったことは明らかである。よって、当裁判所は被控訴人らの過失相殺の主張は採用しない。

二  損害(損害額の算定過程においては、円未満を切り捨てる。)

1  治療費三九五万四九七〇円及び入院雑費五六〇〇円については、当事者間に争いがない。

2  逸失利益

(一) 亡三郎は、平成七年一〇月二九日に死亡した当時、満七歳の男児であったから、基礎収入については、平成七年度賃金センサス第一巻第一表の産業計・企業規模計・学歴計の男子労働者の平均年収額五五九万九八〇〇円を採用する。

(二) 中間利息の控除方法は、ライプニッツ方式を採用する。そして控除すべき中間利息の利率としては、近時我が国では極めて低金利の状況が続いており、現在預金の利率は一パーセントを下回っていること、我が国は高度成長期を経て成熟した社会になっており、今後過去のような経済成長は見込めないから、少なくとも近い将来において預金金利が五パーセントに達するとの予測は立てにくく、したがって、年五パーセントの割合による複利の利回りでの運用利益を上げるのは困難であると考えられること(以上の事実は公知である。)を考慮すると、本件においては、中間利息の利率は、極めて長期にわたる運用利益の見込みに基づいて決められなければならず、したがって、浮動的であることは否定できないが、少なくとも、運用利益の見込みは年四パーセントを上回らないと判断する。なお、遅延損害金を付するのと中間利息を控除することとは全く性質が異なるのであるから、遅延損害金の利率が年五パーセントであるからといって、中間利息の利率もこれに合わせなければならないものではない。

(三) 就労可能年齢を六七歳、稼働可能年数を満一八歳から満六七歳までの四九年間とし、中間利息の利率を年四パーセントとするとライプニッツ係数は一三・八六三〇となる。

(四) 生活費の控除割合は五〇パーセントとする。

(五) 以上に基づき亡三郎の逸失利益を算定すると、次のとおり三八八一万五〇一三円になる。

5,599,800×13.8630×0.5=38,815,013

3  慰謝料

(一) 亡三郎の慰謝料

本件事故の態様(前に判示したとおり、本件事故は亡三郎が横断歩道を渡っているときに、被控訴人B山の一方的過失によって引き起こされたものである。)その他本件の一切の事情を考慮すると、亡三郎の傷害及び死亡による慰謝料は合わせて一八〇〇万円と認めるのが相当である。

(二) 控訴人ら固有の慰謝料

本件事故で当時小学一年であったA野三郎を失った控訴人らの無念さは想像を絶するものがあると思われる。控訴人らの精神的苦痛を慰謝するには各四〇〇万円をもってするのが相当であると認める。

4  葬儀費用

亡三郎の年齢等を考慮し、葬儀費用として九〇万円を認める。

5  墓地購入・墓石建立費用

《証拠省略》によれば、控訴人太郎は墓地の永代使用料として四五万円、墓地工事代金として一四〇万円を支払ったことが認められるところ、亡三郎の年齢、家族構成等を考慮して、そのおおよそ半額である一〇〇万円を本件事故と相当因果関係がある損害として認める。

6  損害額合計

以上を合計すると損害額は七〇六七万五五八三円となる。

7  弁護士費用

本訴における事案の困難性、被控訴人らの応訴態度、認容額等を考慮して、本件事故と相当因果関係がある弁護士費用として四〇〇万円を認める。

8  損益相殺

(一) 平成八年四月二六日に本件事故による損害賠償として三〇〇二万七一〇〇円及び治療費として三九五万四九七〇円が支払われた(争いがない。)

右6及び7の合計七四六七万五五八三円についての本件事故日から右支払日までの一八五日間の年五分の割合による遅延損害金は、次のとおり一八八万七二九二円である。

74,675,583×0.05×185÷366=1,887,292

七四六七万五五八三円と一八八万七二九二円の合計七六五六万二八七五円から三〇〇二万七一〇〇円と三九五万四九七〇円の合計三三九八万二〇七〇円を差し引くと四二五八万〇八〇五円となる。

(二) 平成八年一二月二五日に本件事故による損害賠償として一一七万二九〇〇円が支払われた(争いがない。)

右(一)の四二五八万〇八〇五円についての平成八年四月二七日から同年一二月二五日までの二四三日間の年五分の割合による遅延損害金は、次のとおり一四一万七四一五円である。

42,580,805×0.05×243÷365=1,417,415

四二五八万〇八〇五円と一四一万七四一五円の合計四三九九万八二二〇円から一一七万二九〇〇円を差し引くと四二八二万五三二〇円(確定遅延損害金を差し引くと四二五八万〇八〇五円)となる。

3 以上のとおりであるから、控訴人らの損害額はそれぞれ右四二八二万五三二〇円の二分の一である二一四一万二六六〇円(確定遅延損害金を差し引くと二一二九万〇四〇二円)及び内金二一二九万〇四〇二円に対する平成八年一二月二六日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金となり、控訴人らの本訴請求は右の限度で理由がある。

三  よって、本件各控訴の一部は理由があるから原判決主文第一、二項を変更し、本件各附帯控訴は理由がないからこれらを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法六七条二項、六一条、六四条本文、六五条一項本文を、仮執行宣言について同法二九七条、二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 髙木新二郎 裁判官 北澤晶 白石哲)

<以下省略>

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